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雑多なことを雑然と。

アフロディーテはナルキッソスに微笑むか 2

前回のつづき

 

 

 

act.2 池

 

 

背景は公園のような絵。舞台左半分に池。中央にベンチ。

雪村、一心に池を覗き込んでいる。安田、ベンチに座って本を読んでいる。右手側からリカ子登場。

 

リカ子「あ、いたいた!ユッキー先輩!あ、安田先輩、こんにちはー」

安田「こんにちはー」

 

リカ子、雪村の隣へ。

 

リカ子(いい笑顔で)「ユッキー先輩、こんにちは♡」

雪村(池から目を逸らさずに)「はい、こんにちはー」

リカ子(池を覗き込んで)「お魚さんでもいるんですか?それともカメさん?」

雪村「カメなんかよりもっといいものが見えるよ」

リカ子「えー?何、何?イルカさん?」

安田(ぼそっと)「バカ…」

雪村「違うよ。よく見て」

リカ子「えー?リカ子分かんな~い」

雪村「よく見なさいよ。とんでもない美青年が映ってるでしょ。彼、さっきからずっとオレのことを見つめてくるんだよ。あんまりにも美しいからもう目が離せなくて…」

リカ子「え~?やだぁユッキー先輩ったら!それ、ユッキー先輩ですよぉ」

雪村「え?!オレ?!」(まじまじと池を覗き込んで)「本当だオレだ!うわ~、恥ずかし!オレってやつは、あぁ恥ずかし!」

リカ子「先輩かわいい~!」

 

雪村、リカ子、キャピキャピする。

 

安田「ギリシャ神話のナルシスそのものだな」

雪村(安田の方を見て)「えー?何か言った、やっすん~?」

安田「すごいバカナルシーがいるって言ったんだよ」

雪村「えっ、どこどこ?!そんな奴いるの、どこ?!」

安田「お前のことだよ!」

雪村(びっくりして)「オレ?!」

安田「わざとだろ、お前」

リカ子「やだー、安田先輩ったら、ユッキー先輩がイケメンだからってひがんでるんでしょ~?まったく、これだから普通の人は…」(ため息をつく)

安田「普通で悪かったな!」

雪村「リカ子、あんまり本当のことばかり言うんじゃないよ。真実は時に人を傷つけるものだ。ここはひとつ『安田先輩もジャニーズに入れるくらいイケメンだけど』くらい嘘をついてみなさい」

リカ子「え~、そんな大嘘、リカ子つけな~い」

安田「鬼か!お前ら2人そろって鬼か!フォローしているようで余計に人を傷つけてるよ!」

雪村「安田が怒ったじゃないか!リカ子、めっ!」(叱るポーズ)

リカ子(喜んで)「キャー!ユッキー先輩に怒られちゃった、キャー!ヤバーい!」

安田「幸せな奴だな!」

 

ここで突風が吹くSE。3人、風上の方を向く。

 

雪村「すごい風だな」

安田「雨が来るかもな」

リカ子「え~、こんなに晴れているのに?」(上を指す)

安田(風上を指して)「ほら向こうに雨雲がある」

雪村「おー、本当だ」

リカ子「安田先輩すごーい。天気予報士になれますよぉ」

雪村「ホントホント。…と、雨が来るとなると早くしないとな。やっすん!カメラお願い!」

 

雪村、カバンからカメラを取り出して安田に渡す。

 

安田「え?何?」

雪村「本日のベストショット!ほら、こっち!」

 

雪村、池の中を覗き込む。安田、池に近づく。

 

安田「何、クジラでもいるの」

リカ子(ぼそっと)「イルカですよ」

雪村「うまい具合にオレと池に映ったオレを一緒に写して!ほら、今!この顔サイコーだから今撮って!早く!」

安田「分かったから少し黙れ!」

 

雪村、池に向かってキメ顔。安田、写真を撮る。

 

雪村「もう一枚!」

 

雪村、若干ポーズを変える。安田、撮る。

 

雪村「…ハイ、OK!どれどれ、見せて」

 

雪村、リカ子、安田のカメラをチェックする。

 

リカ子「やーん、素敵!かっこいい~!」

雪村「う~む、なかなか!やっぱりカメラはやっすんに任せるに限るな!オレの輝き方が違う」

安田「完全にカラヴァッジオナルキッソスだな、こりゃ」

リカ子「何ですか、それ?」

安田「雪村のことを書いた絵だよ」

リカ子「何それ、絶対見なきゃ!カラヴァッジオナルキッソス…メモメモ」(メモする仕草)

雪村(伸びをして)「よ~し、今日の仕事終わり!今日は真実を写した写真が撮れたぞ。なぁ、やっすん?」

安田「今日はね」

リカ子「ていうかぁ、お二人とも平日の昼間からこんなところで何してるんですかぁ?ニート?」

安田「オレは今日は仕事休み。久々の連休」

リカ子「ユッキー先輩は?」

雪村「そう言うリカ子は?」

リカ子「私まだ学生だもん。今日は授業入ってないからヒマなんです」

安田「いいな学生は」

リカ子「先輩たちだって去年までは学生だったでしょー!」

安田「で?」

雪村「ん?」

安田「雪村君は何をしているのか教えてあげたら?」

雪村「一生懸命生きてるよ」

リカ子「キャー、素敵!」

安田「仕事は?」

雪村「しごと?」

リカ子「そういえば就活してなかったですよね、先輩」

雪村「んー…」

 

雪村、うろうろする。

 

安田(怪訝そうに)「雪村?」

リカ子「ユッキー先輩?」

雪村「仕事をする必要ってあるのかな?」

安田「は?」

雪村「人はね、衣食住を問題なくこなすために働いてお金を稼ぐんだよ」

リカ子「そうですねぇ」

雪村「例えば安田君はいいもの食べて、いい部屋に住んで、少しでもかっこよく見える服を着るために、せっせこせっせこパソコンをカタカタしているわけだ」

安田「言い方」

雪村「でも僕はどうだい?現状実家暮らしで満足しているし、食事はステキな皆さんが奢ってくれる。昨日は別荘だって手に入れた。服だって高いものはいらない。だってサンキで買った299円のTシャツだってオレが着ればサン・ローランの高級シャツに見えるから」(シャツを指す)

リカ子「えぇー!?これ299円なのぉ?!サン・ローランの新作だと思ってた!!」

雪村(得意げに)「ほらね?だからオレはまだ働かなくていいと思っている」

安田「お金稼ぐのは楽しいぜ。本物のサン・ローランだって買えるよ」

雪村「たしかにね。ブロマイドが売れると楽しくなっちゃうよね。オレが存在するだけでお金が発生するんだぜ?こんなボロい商売…おっと、こんな素敵なことってある?」

リカ子「いいな~、私もそんな風に生きた~い」

安田「素敵かなぁ」

雪村「それにオレは顔が良いからね。就職しようと思えばいつだって就職できる。美男美女ほど就職率が高いんだぜ?」

リカ子(羨望の眼差しで)「へぇ~」

安田「こいつ本当に腹立つな」

雪村「やっすん!短気は損気!」

安田「短気の原因は誰だよ!」

 

ここでゴロゴロと雷の音。3人、空を見上げる。雨音SE.

 

リカ子「ヤバッ。本当に降ってきた」

雪村「さっすがお天気お兄さん安田君」

安田「お天気お兄さんじゃねーよ」

リカ子「ねぇ、濡れちゃうからどこかで雨宿りしましょうよ!」

 

リカ子、袖に向かって走り出す。

 

安田「そうだな」(と言ってリカ子に続く)

雪村「おっと、カメラカメラ」(カメラを拾い、自撮りするポーズ)

安田(袖から顔を出して)「雪村置いてくぞ!」

雪村(自撮りしながら)「水も滴るイイ男、オレ!」(パシャッとSE)

安田「バカなの?!ナルシストもそこまでいくと面白いよ!風邪ひくから早く来い!」

 

安田、袖へ消える。

 

雪村「あっ、待ってよ」

 

雪村、カメラを持って慌てて袖へ。

雨音SEは次actまで継続。暗転。

 

 

 

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カラヴァッジオ作「ナルキッソス

画像元:ナルキッソス - Wikipedia